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琉球大学を中心とする南大東スマート農業実証コンソーシアムは,未来のさとうきび農業を担うスマート農業プロジェクトをスタートする。これは,農林水産省および国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の委託事業「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(令和1・2年度)の採択を受けた「さとうきびの生育情報に基づく精密栽培管理によるスマート農業体系の実証」プロジェクトである(研究代表者は琉球大学農学部・川満芳信教授)。南大東村で活躍している農業生産法人アグリサポート南大東株式会社(代表取締役・沖山龍嗣)の圃場において,2年をかけてさとうきびスマート農業技術の開発と実証を行う。
南大東村は,約120年前に開拓が始まって以来,さとうきびの島として成り立ってきたが,遠隔離島であるために,その歴史は人手不足と台風や干ばつなど自然の猛威との闘いであった。それを制してきたのは,先人たちの果敢な機械化農業の導入や防風林整備などへの取り組みである。
さとうきび農業の中では,最も先進的な機械化一貫体系を確立し,わが国のトップランナーとして他の地域をリードしてきた。しかしながら,農家の高齢化などに伴って熟練オペレータが急減し,生産システムは危機的なレベルに達しており,島を守るさとうきびの将来に大きな不安を抱えている。
この窮状を克服するには,ロボット技術,ドローン,ICT・IoT,AI・ビッグデータなどの先端技術を活用した新たな生産システムすなわちスマート農業技術が最も効果的である。南大東村では,1970年代の機械化の導入,1990年代のグリーン化と,過去に2回の生産システムの変革が行われている。今回は,取り組みは将来のさとうきび農業の発展と安定につながる第3次イノベーションと言える。具体的な取り組みは次の3課題である。

 1.トラクタやハーベスタなどに,ロボット技術の応用であるGNSS(全球測位衛星システム)自動操縦システムを装着し,植付けから収穫,株出管理までの一貫した精密・超省力栽培体系を確立する。このシステムを農作業に用いるには,移動するトラクタ(移動局)とある場所に固定した(基地局)が必要となる。南大東村の4か所に基地局を設置して,どの圃場でもGNSS自動操縦が可能になる体制を構築する。

GNSS自動操縦システムを用いた線引き作業
(ハーベスタ等の別の機械にも展開)

2.ドローンやIoTセンサーネットを用いて,さとうきびの生育や気象情報などを効率的に収集・解析し,データに基づく高度ICT農業システムを確立する。これによって,農家は時々刻々と変化する環境に応じた適期・精密作業によって収益性向上に取り組むことができる。島内6か所で気象データを収集し,農家が最も関心を示す降雨データなどをスマホで配信する。生育・環境情報に加え,GNSS自動操縦システムによる作業データなども含めて,GIS(地理情報システム)に集約し,情報の「見える化」を図る。

琉球大学に設置した先行実験で使用しているセンサーポスト
(南大東島での目的に合わせ改良)

3.さとうきびの生育や環境情報に基づく精密点滴潅水技術を開発し,希少な水資源を有効活用してさとうきびの増収と品質向上を図る。
これらの技術開発と実証に併せて,南大東村およびそれ以外のさとうきび栽培地域への速やかな普及を図るための活動を行う。この技術はさとうきび以外の作物,園芸,畜産にも応用可能である。
今年度は機器やシステムの整備と技術開発を行い,本格的な運用は来年度を中心に実施する。コンソーシアムでは,普及・周知活動の一環として,秋以降,現地見学会その他を予定している。また,スマート農業技術者を育成するためのカリキュラム開発やサービス開発にも取り組む

 これらの技術開発と実証に併せて,南大東村およびそれ以外のさとうきび栽培地域への速やかな普及を図るための活動を行う。この技術はさとうきび以外の作物,園芸,畜産にも応用可能である。
今年度は機器やシステムの整備と技術開発を行い,本格的な運用は来年度を中心に実施する。コンソーシアムでは,普及・周知活動の一環として,秋以降,現地見学会その他を予定している。また,スマート農業技術者を育成するためのカリキュラム開発やサービス開発にも取り組む